日本人の健康寿命は70代という現実

日本人は男女とも世界トップクラスの長寿だが、何歳ぐらいまで健康で生きられるのだろう。「2022年度 高齢社会白書(概要版)内閣府」のデータがある。

男性 平均寿命81.41歳 健康寿命72.68歳(差は8.73歳)
女性 平均寿命87.45歳 健康寿命75.38歳(差は12.07歳)

健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されているが、男女ともに平均寿命とは約10年の差がある。この期間は日常生活に不便が生じて支援や介護が必要になるということだ。つまり、人生80年が当たり前の時代になっても、最後の10年はあまりハッピーではない状態で生きなければならない。

メディアでは高齢者のアスリートや90歳を超えても現役で仕事をしている人を取り上げることが珍しくないが、それはまだまだ少数者。支援なく日常を送れる健康寿命が70代という現実は頭に入れておきたい。そして、要介護に至った原因の調査データも紹介する。

〈現在の要介護度別にみた介護が必要となった主な原因(2022年 厚生労働省 国民生活基礎調査の概況より)〉
1位 認知症 16.6%
2位 脳血管疾患(脳卒中) 16.1%
3位 骨折・転倒 13.9%

椅子に座っている時間が長いほど寿命が短い

3位の「骨折・転倒」の原因を詳しく調べてみると、「身体要因」や「加齢的変化」などがあり、「膝、股関節の疾患」「脊椎、腰椎の脊椎症」「大腿骨の骨折」「筋力の低下」といった例が挙げられている(国立長寿医療研究センター公式サイト「転倒の原因」より)。これらは、藤井教授によると「運動器の障害」であり、「筋力の低下」は「骨格筋の衰退」、つまり近年知られてきた「サルコペニア」だという。

サルコペニアとは、「sarx(筋)」+「penia(喪失)」の造語。加齢に伴う進行性の筋量及び筋力、あるいは身体機能の低下のことを言い、「身体の脆弱・機動性の欠如・障害・死亡のリスクを増加させるもの」とされる。年を取っていくと誰しも筋力、筋量が低下していくが、それの著しい状態がサルコペニアだ。現在は疾病に分類されていて、治療の対象となる。

「筋量は30代から低下しますから、40~50代の方は日常に運動を取り入れて筋量を維持することが大切です。座りっぱなしなど、不活動時間を減らすことも意識したいですね」と藤井教授。近年発表された、「椅子に座っている時間が長いほど病気にかかりやすく寿命が短い」というデータは不活動時間のリスクを示している。

オフィスチェア
写真=iStock.com/Spiderstock
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